無人島でサバイバル生活をする際、食料調達は大きな課題です。
とはいえ、釣り道具や野草の知識もなく、獣を狩るのは難易度が高いとなるとどうやって食料調達すればいいのか悩みますよね。そんなときに頼りになるのが、“動かず、じっとそこにいる貝”です。
本記事では、磯で比較的見つけやすく、かつ“食べられる貝”を厳選して5種ご紹介します。釣り具や調理器具が限られている状況でも、生き延びるための選択肢として、ぜひ覚えておいてください。
貝を採る前に知っておきたいこと
岩にしがみついている巻き貝や二枚貝を採る際、注意すべき点があります。それは上から無理に叩いたり衝撃を与えないということ。
無理に衝撃を与えてしまうと、貝が驚いて岩により強く張り付いて外れなくなる場合があります。貝を採る成功率を上げるには「岩と貝殻の間にナイフの刃先を滑り込ませ、そっと剥がす」のが鉄則。干潮時にたくさん採れるので、狙い時は、干潮のタイミングです。
また、貝をそのまま火にかける前に「砂抜き」を行いましょう。えぐみやジャリジャリ感を防ぎ、味が格段に良くなります。余裕があれば、海水か淡水で一晩かけて砂を吐かせるのがベストです。
磯で見つかりやすい「食べられる貝」5選
無人島や磯で見つけやすく食べられる貝を5種類紹介します。
それぞれの特徴や扱い方のポイント、おすすめの食べ方などについて紹介するので、参考にしてみてください。
イシダタミガイ

イシダタミガイは3〜4cmしかない小さな貝で、巻き貝の代表格です。名前のとおり、石畳のような模様が特徴の巻き貝で、潮だまりや岩肌に多く見られます。日本各地で見られ、形も比較的大きいため見つけやすいのが特徴。
群れでいることが多いため、効率よく数を集められるのが魅力です。動きは遅く、指でも簡単につまめるため、サバイバル初心者にも扱いやすい貝といえます。
調理はシンプルに茹でるだけでOK。海水で塩ゆでした後に砂抜きをきちんと行いましょう。殻からツルッと身が取り出せ、ほんのり磯の香りが広がります。味は素朴ですが、量が揃うと立派なタンパク源に。海辺での即席おつまみ感覚で楽しめる、頼れる小さな存在です。
以下の記事で紹介している1ヶ月の無人島サバイバル生活でも、イシダタミガイが大活躍しました。
マツバガイ

マツバガイはカサガイの仲間で、ペタッとした形で岩場に張り付いています。見つけるのは簡単ですが、強力な吸着力のため、指だけでは外れないことも。
採る際はナイフや薄い貝殻などを使い、素早く剥がして捕獲しましょう。横からスッと差し込むのがコツです。
火にかけると、マツバガイは意外なほど旨味が出ます。味はアワビに近く、噛むとギュッと海の風味が広がり、満足感も高め。岩場で見つけたら、ぜひ確保しておきたい“本格派の味”です。
カメノテ

見た目のインパクトが強く、初見では「本当に食べられるの?」と思ってしまうカメノテ。カメの手のような見た目からついた名前で、厳密には貝ではなく甲殻類です。
実はフランス料理でも使われる食材で、旨味は折り紙つき。岩の割れ目や潮が強く当たる場所に群生し、引っ張るだけで簡単に採れます。
食べ方としては、そのまま海水で茹でるだけ。濃厚なダシとプリッとした身が味わえます。クセがなく、味はカニやエビに近いです。見た目からは想像できない美味しさに驚く人も多く、サバイバルの食材の中では“最もコスパの良いごちそう”といえるでしょう。
スガイ

黒くて丸い殻に、表面が少しツヤっぽい巻き貝がスガイです。西日本に多く生息している巻き貝の一種で、サザエを小さくしたような見た目をしています。
手でつまめるサイズ感で、安全に採取できるのもポイント。潮だまりや岩場でよく見かけ、まとまって群れていることが多いのですぐに数を集められます。
茹でると殻が外れ、身はシンプルでクセのない味わい。軽い苦味と磯の香りがあり、塩気と相性が良い貝です。小ぶりながら栄養価はしっかりしているので、サバイバルでは“数で勝負できる食材”として頼りになります。
イボニシ

イボニシは藻などを食べる貝とは違い、貝を食べる肉食性の貝です。ゴツゴツした殻が特徴的な巻き貝で、潮間帯の岩の隙間に潜り込んでいることが多い種類。
他の貝に比べて見つけやすく、比較的どこにでも生息しています。ひとつひとつが大きめなのもあり、食べ応えがあるのが魅力。
調理は蒸し焼きや茹でが手軽。貝独自の旨味がしっかりしていて、特に出汁がとても濃厚です。サバイバル飯としては、スープのベースとして活用しやすい貴重な食材。火を通すと身が縮むため、過度の加熱には注意しましょう。
貝を安全に見分ける7つのチェックリスト
無人島で貝を採って食べるときに、もっとも大事なのは「安全に食べられる個体を見極めること」です。
貝は一見どれも同じように見えますが、死んでいる貝・弱っている貝・毒の可能性がある貝を誤って食べると、サバイバルどころか体調不良につながる危険もあります。
磯で貝を採る人なら必ず知っておきたい“7つの安全チェックポイント”をまとめました。
- “生きている貝”か必ず確認する
- 匂いがおかしくないか
- 明らかに刺激的な色の貝は避ける
- 殻にフジツボや苔が大量についているものは避ける
- 噴火湾・閉鎖水域は“貝毒リスク”が高い
- “見たことがない貝”は食べない
- 必ず“しっかり加熱”して食べる
未経験の人でも、このリストを押さえておけば安心して貝採りに挑戦できます。
① “生きている貝”か必ず確認する
貝は生きていれば殻をしっかり閉じており、触ると反応が見られます。逆に、死んだ貝は毒素が急速に増えるため、絶対に口にしてはいけません。
以下に当てはまる貝は食べないようにしましょう。
- 殻が半開きで軽く引っ張るだけで外れる
- 触っても閉じようとしない
- 身がぐにゃっとして張りがない
まずは「生死の判断」が最優先です。
② 匂いがおかしくないか
手に取ったら、必ず匂いをチェックしましょう。
- 海水の香り → 食べても問題ない可能性が高い
- 強烈な磯臭・腐敗臭 → 危険サイン
- 卵の腐ったような硫黄臭 → 100%アウト
特に硫黄臭は腐敗の証拠。火を通しても消毒できないため、絶対に食べないでください。
③ 明らかに刺激的な色の貝は避ける
自然界では、毒を持つ生物ほど派手な色になる傾向があります。
磯で採れる一般的で安全な貝は、茶色・黒・灰色など地味な色が中心。
反対に、以下の特徴は避けるべきサインです。
- 蛍光色のような鮮やかな色
- 黒と黄色の警告色
- 明らかに人工的で異質な模様
迷ったら触らない・採らないが鉄則です。
④ 殻にフジツボや苔が大量についているものは避ける
フジツボや海藻がびっしり付いている貝は、長いあいだ動けていない個体である場合があります。
弱った貝は傷みやすくて食中毒リスクも上がるため、避けたほうが無難です。
⑤ 噴火湾・閉鎖水域は“貝毒リスク”が高い
貝毒とは、二枚貝が毒を持つプランクトンなどを食べて体内に毒素が蓄積される現象のこと。そういった貝を人間が食べると食中毒を起こします。
症状としては、痺れて最悪の場合死にいたる可能性もある麻痺性貝毒や、下痢や腹痛が起こる下痢性貝毒などがあります。貝毒や雑菌は環境によって発生しやすい場所があるので、以下の場所にある貝を採るのは避けましょう。
- 赤潮発生が多い場所
- 水が淀んでいる入り江
- 生活排水が流れ込むエリア
- 臭いの強い潮溜まり
このような場所の貝は、例え元気そうでも安全とは限りません。
上記のような場所にいる貝は採らず、波通しの良い磯や綺麗な潮だまりで採取しましょう。
⑥“見たことがない貝”は食べない
貝の種類は非常に多く、似ているようでも毒を持つ別種の可能性があります。名前が分からない貝・初めて見る貝は採らないほうが安全です。
初心者は以下を優先しましょう。
- イシダタミガイ
- マツバガイ
- スガイ
- イボニシ
- トコブシ
迷ったら「小型の巻き貝」や「カサガイ類」を優先しましょう。いわゆる「よく見る地味な貝」こそ、サバイバルでは安全で心強い存在です。
⑦ 必ず“しっかり加熱”して食べる
磯で食べるなら、どんな種類でも完全に火を通すことが大前提です。
- 茹でる/蒸す → 火が通りやすく安全
- 直火焼き → 時間を長めに
- 「沸騰してから5分以上」が最低ライン
生食は絶対にNG。サバイバルにおける貝料理は「加熱一択」です。
まとめ:磯の貝は“サバイバルの救世主”
磯の貝は貴重な栄養源であり、ビタミン・ミネラル・良質なたんぱく質を補う頼もしい食材です。ですが、無人島や磯に生きる生き物たちの数は有限。過剰に採取すれば、生態系や将来の資源に悪影響を与える恐れがあります。
また、日本では貝や海産物には漁業権というルールがあり、保護対象の貝を無許可で採ると法律違反となる場合もあります。漁業権を守り、許可なしで採らないようにしましょう。
無人島でのサバイバルを考えているなら、まずは磯に降り立ち、潮だまりや岩の割れ目を探してみてください。波の音の中で、自分の手で得た貝の身を塩ゆでにして味わう。それはきっと、文明社会では味わえない“命をつなぐ実感”を与えてくれるはずです。






