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【無人島活用例】子どもたちの発想力を育む無人島キャンプ

無人島貸切の活用例は多彩

企業研修、新人研修、ゼミ合宿、サークル合宿、イベント開催など、無人島の活用方法は無限大。1島丸ごと貸し切ることができる無人島もあり、近年その活用事例は急増しています。
今回は、京都で「10歳からの社会人教育」をコンセプトに教育事業を手がける教室《studioあお》が行なった、子どもたちが主役のキャンプをご紹介します。舞台は、和歌山県の無人島「地ノ島(じのしま)」です。

和歌山県・地ノ島

Photo by MUJINTO PROJECT

「防災」をテーマに”生きる力”を育むプログラム

非常時に役立つ生きた知識を体験する

今回《studioあお》は「防災」をテーマに無人島キャンプを実施。
災害は防ぐことができないもの。特に日本は災害が多くいつ自分がその非常事態に陥るかわかりません。
では、災害にただ抗うのではなく災害が起きたらどう対処するのがいいのか。
それを子どもたちに考えさせることを目的に無人島キャンプを行ないました。

本格的な無人島を初体験

実は、《studioあお》が無人島でキャンプをするのは3年目。ですが、BBQ施設などもない、地ノ島のような本格的な無人島で行なうのは今年が初めてです。
集まった子どもは小学生を中心に約40名。
天気は快晴。船に乗り目の前に迫ってくる無人島に、子どもたちの表情からも高揚した気持ちが感じられます。

そしていよいよ無人島に着岸。船に積んだ荷物も自分たちで下ろします。
何もない、手助けしてくれる人もいない場所での生活のスタートです。

自然との共存vs自然との勝負

今回の無人島キャンプは「防災」がテーマです。
自然災害によりいつも使っているガスコンロが使えなくなったら? 電気が使えなくなったら?
そんな状況を想定し、子どもたちは火起こしや水を使わない炊飯など、様々なことに挑戦しました。

子どもたちがとても苦労した火起こし。トライしたのは虫メガネで太陽光を集め、その熱から火を発生させる方法です。
摩擦熱で火を起こすよりも簡単そう。でも意外と難しい。
一瞬火がつくだけでは成功とはいえません。火を持続させなければならないのです。
火がついては消え、ついては消え、の繰り返し…。
そこに、予想外の敵が。

太陽が、沈み始めているのです。

この方法には強力な日光が必要ですが、日が傾くにつれ、どんどん難易度が上がっていきました。
火がつかないとBBQができない。
そんな焦燥感の中、子どもたちは必死に頑張り、ギリギリのところで火がついたときには歓声が上がりました。

自然の力を借りなければ火がつかないけれど、
着火への道を阻むのもまた自然。
厳しい現実を身をもって体感した瞬間でした。

社会の仕組みを学ぶために、無人島が最適なワケ

「より快適に生きるため」の知恵が生まれ始める

みんなが火起こしに取り組むさなか、おもしろいことが発生しました。

ー「火が起こせた班から火を購入する」

どの班も懸命に火起こしに取り組みましたが、限界が見えたのでしょうかBBQができないかもしれないという恐怖に負けたのでしょうか、
とある班が、先に火起こしに成功した班から火を分けてもらう交渉に出たのです。

実は、これこそ《studioあお》が取り組む「10歳からの社会人教育」そのもの。
「購入」という表現をしていますが、実際には現金のやりとりは発生していません。
今回のキャンプはポイント制のゲーム「クエスト」の中で行われています。

各班に元々の持ち点が数ポイント。
例えば、魚1匹釣れたら5ポイント、火が起こせたら30ポイント、寝具作り80ポイント、など。
所有しているポイントで、海鮮や花火やお菓子やジュースなど、用意された「無人島で豊かに暮らせるグッズ」を購入することもできます。

ちなみにクエストには必ず成し遂げなければならない「MUST」と、お風呂作りやランプ作りなどより生活しやすい環境を作る「MORE」という2種類があり、火起こしやテント設営は「MUST」です。

なかなか火が起こせない班から火が起こせた班へ「火種を30ポイントで売ってほしい」という交渉が始まりました。

もちろん、これは大人が教えたわけではありません。

火が起こせること自体ももちろん大切。
でも、どうしたら火を手に入れてより生きやすい環境を作るか。
そのために知恵を絞って方法を考えることも大切。
むしろ、社会に出たら課題に対して自ら解決方法を考える力が求められます。

「何もないところからどうすれば豊かに暮らせるのか」
自ら問いを立て、発想し、実装する能力を身につけることが社会に出るうえで一番大切なことと《studioあお》は考えています。

無人島でのこの出来事は、まさに社会人への第一歩へといえるのではないでしょうか。

衝撃体験が新しい価値観を生む。無人島は最高のフィールドだった

学校や塾と家の往復だけ。そんなありきたりの日常では考え方も価値観も凝り固まってしまいがちです。通り一遍の教育だけを受けた状態でいきなり社会に出ろ、活躍しろを求めるのはあまりにも酷。ですが、今の日本はそれが現状です。

社会は変化し続けているのに教育は昔から変わっていない。それに危機感を抱いて設立されたのが《studioあお》です。
教育は社会に出るための準備と位置付け、社会で活躍できる人材を育てることを使命としています。

そんな中で「ショーゲキ!!に会いに行こう。-凝り固まった価値観の破壊と再構築-」と題して行なってきたのがこの無人島キャンプ。

当たり前にある電気・ガス・水道がなく、あらゆる前提もなく、そこにいる仲間とどうにかして生き延びなければならない。
そんな環境そのものが子どもたちにとっては「ショーゲキ」です。

そんなある意味自由すぎる「なんでもあり」の無人島という環境だからこそ、子どもたちの自由な発想力が存分に発揮されたのです。

無人島体験がもたらした、子どもたちの変化とは

主体性が明らかに向上。自ら考えて動く力が顕著に

無人島にいる間にも、子どもたちは変化していきました。
例えば火起こし中。
班で1つ火を起こせればいいのですが、班員全員がいる必要ありません。
そこで、手が空いた子は自ら釣りに出かけてポイント集めに勤しむように。
自然と役割分担をするようになりました。

また、大人のスタッフとほぼ同じ動きをして昼食を用意したり、暑そうな人を扇いであげたり。何も言わずとも荷物を積極的に運んだりゴミ拾いをしたり。
一人一人が、自分にできることを探し、誰かに貢献するために動くようになりました。

また、火起こしをはじめとして一つのことにこれほどまでに集中して取り組んだことも、子どもたちにとっては大きな成長です。

社会への第一歩を無人島から踏み出した子どもたち

無人島という非日常の中では、経験したことがない壁にぶつかることばかりでした。
魚が思うように釣れない、火が全然起こせない。

逆に、自分が泳げることを知ったり、魚をさばくことを楽しいと感じたり、仲間の成功を自分のことのように喜ぶ自分に気づいたり。こんな新しい自分との出会いも無人島だからありました。

studioあお》は、子どもたち自身が興味のあるものからプロジェクトを自ら立てて取り組ませることを日常的に行なっていますが、今回の無人島キャンプで、新しく興味関心が湧いた子どももたくさんいるはずです。
無人島キャンプがきっかけとなり、自分で問いを立て、それに立ち向かっていける子どもが増えるかもしれません。

机上で社会の仕組みを教えたところで、実践的な力は何も身につきません。
ですが「自分で考えるしかない」無人島で過ごすことで、子どもたちは多くのことを発想し、取り組んだことでそこから得た学びは大きいことは明らかです。

きっといつもの生活に戻っても、無人島での経験が日常のあらゆる所で活きてくることでしょう。
子どもたちにとって大きく変われる第一歩となった無人島キャンプとなりました。

2019.8

写真提供:《studioあお

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